デザインチーム

隈研吾、 佐藤未季 – KKAA (隈研吾建築都市設計事務所:東京)
Roberto Giordani、 オーナー兼ゼネラルマネージャー – Montura® by TASCI srl(イタリア)
Marco Imperadori – ミラノ工科大学(イタリア)
Emanuele MontibellerGiacomo Bianchi – Arte Sella(イタリア)

コンセプト

東京オリンピックの年に、生産数限定のスペシャルジャケットをデザインするというアイディアは、2018年アルテセラにおけるパビリオン「Kodama」制作発表の際に隈研吾とRoberto Giordaniの出会いから、生まれました。

Foto di Carlo Baroni - Montura® Sashiko Jacket e l'opera "Kodama" dell'architetto Kengo Kuma ad Arte Sella
Ricamo Montura® Sashiko Jacket per il progetto "Ger For Life"

日本や東洋で一般的に縁起が良いとされている数字を組み合わせた、83+83着のジャケットが限定生産され、収益は隈研吾が震災復興事業に携わる宮城県南三陸町を拠点とするNPO法人「WE ‒Women's Eye」と、Montura®が主導する「Ger for Life」プロジェクトに寄付されます。
アルテセラとミラノ工科大学もこのプロジェクトに積極的に参加しています。

刺子ジャケット 2021

隈研吾の考えは、優雅でありながらスポーティで、インフォーマルなシーンでも、より格調高いイベントでも着用できるジャケットを生み出す点にありました。 このジャケットには超薄型フードも内蔵されており、メイド・イン・イタリーの素材、Montura®のテクニカルスタイルが活かされています。
連帯や結束のメッセージが基本となっており、デザインは、WEの重要なワークショップのひとつでもある、伝統的な刺子が参考になっています。この細かいキルティングを使い、東北の農家の人たちは、ほんの少しの材料と布の切れ端を大切にしながら、何もないところからきわめて美しく尊厳のある衣類を縫いあげてきました。この技術は17世紀、農家や漁師の家の女性たちが開発したものです。伝統的には藍染の布地に白い綿糸で刺繍を施し、シンプルさと経済性に適った優雅さを与えます。刺子ジャケットでは、黒地にグレーのステッチを施しています。

Foto di Carlo Baroni - Particolari Montura® Sashiko Jacket
Foto di Carlo Baroni - Montura® Sashiko Jacket vista laterale

刺子のパターンはMonturaのロゴを連続展開させています。偶然にも「七宝つなぎ」にとても良く似た模様が浮かび上がりました。七宝つなぎは日本ならではの「助け合い」の精神を象徴しており、このプロジェクトのコンセプトともリンクしました。

Marco Imperadori ‒ プロジェクトに関する意見

刺子ジャケットは卓越した2つの才能:世界に名だたるスター建築家、隈研吾氏と、テクニカルウェア分野の第一人者の Montura の出会いから生まれました。Roberto Giordani 氏と隈研吾氏が、彼が制作したパビリオン「Kodama」のあるアルテセラで出会ったとき、Emanuele Montibeller、Giacomo Bi-anchi とともに「特別な化学反応」が起こったことにすぐに気付きました。両者とも、社会的問題を支援する取り組みに尽力していることも、自然なコラボレーションにつながりました。ここから生まれたのが、(Montura のスタイルオフィスの尽力により実現した ) 特別なレイヤー構造と素材を使用し、隈研吾氏の哲学を体現した、特別でユニークなジャケットを作るというアイディアでした。技術革新と機能的なレイヤリングに、Montura ロゴを繰り返し広げ、現代的な刺し子刺繍を作り出しているのです。困難に直面する女性たちを助ける 2つの取り組み(モンゴル「Ger forLife」と日本「WE- ウィメンズアイ」)を支持する選択はごく自然であり、関わるすべての人々が共通の目標に向かって最大限の努力をするように刺激されました。

建築物における技術革新を研究する教授である私は、この卓越した(建築物の外装を連想させる)多層構造の誕生を目にすることができたことを特別に感じています。これは第2の肌のようでもあり、多孔性で、その穴の多さや耐久性は葉も目に浮かびます。

最終的に、この特別でユニークなアイテムを目の前にして、私は、その美しさが美的感覚とデザイン性のみならず、大部分がテクノロジーから放たれるものであることを実感しています。私は学生たちに向かってよく、美しさは軽やかでパフォーマンス性が高い、「目に見えないテクノロジー」にあると語ります。Montura と隈研吾氏はこのコンセプトを完全に実体化することに成功したのです。

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